NHKインターネットニュースに掲載されました


※今回の記事は取材担当の方に依頼して転載の許可を得て掲載いたしました。
(NHKのインターネットニュースでは記事が1ヶ月間だけしか掲載されないため、残るようにブログに本文全体を掲載させて頂きました。)
元の記事へのリンクはこちらhttp://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2015_0407.html

地域再生のカギを握る“協力隊”

4月7日18時46分

人口の減少や高齢化に悩む地域に、都市部の若者らを招き入れ、地域活動に取り組んでもらおうという国の「地域おこし協力隊」制度。
全国で活動する隊員は1000人を超え、国は、来年までに3000人に増やす方針です。
この制度は、国が掲げる地域再生の切り札となるのか、また、課題は何か、ネット報道部の山田博史記者が取材しました。

「奇跡の集落」

新潟県南部の豪雪地帯、十日町の中心部から車で約20分の山あいに、「奇跡の集落」と呼ばれる地区があります。
「池谷集落」は、11年前の新潟県中越地震のあと、住民が高齢の6世帯・13人にまで減って集落の存続が危ぶまれる「限界集落」となっていました。
そうしたなか、5年前、十日町の「地域おこし協力隊」の隊員として、訪れたのが多田朋孔さん(37)でした。

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東京のコンサルタント会社に勤めていた多田さんは、リーマンショックなど世界経済の激流を目の当たりにして「今の社会の仕組みはいつか破綻するのではないか」と考えていたと言います。
そして、田植え体験をしに池谷集落を訪れた際、▽コメの直販や、▽農業の担い手を呼びこむための空き家の改築など、集落存続の危機に立ち向かう住民の姿に感銘を受け、隊員に応募し、妻と子どもの3人で移り住んできたのです。
「中山間地域は、株でいえば今が底値と感じました。社会が破綻したときに家族を守るスキルを身に着けつつ、地に足の付いた活動をして全国に発信できる集落にしたいと考えました」(多田さん)。

多田さんが取り組んだのは集落で特に危機感の強かった農業の担い手育成。
地域ですでに活動していた任意団体をNPO法人化させ、雇用を生む体制を作りました。
そして農薬を使わないコメ作りやコメの加工品販売などを手がけたり、外から農業に関心のある若者を呼んだりしています。
今では、若い人が増えて集落は8世帯・20人となり、「限界集落」を脱したのです。

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今も移住を希望する人がいるということで、NPOは、受け入れのための住宅を建設しています。
多田さんは、隊員としての任期3年を終えましたが、今も残って活動を続けています。
「小さな地域では提案したことを実現させやすく、やりがいも感じる。この地域を集落のモデルとして全国に発信したい」と話しています。

地元出身者も

十日町市は、現在、全国で最も多い17人の隊員が活動しています。
17人は、受け持つ地区に分かれ毎月1~2回、地元の人と意見交換をして地域の活性化に取り組んでいます。

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そのうちの1人、高橋美佐子さん(42)は地元の十日町市出身です。
東京のホテルで、農作物の買い付けを担当し、全国を回っているうち、地元の食材を使った料理を提供する農家民宿を開きたいと考えるようになり、Uターンして協力隊に応募しました。

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高橋さんは「隊員として、地域の野菜販売などに協力しながら農家民宿の準備をしています。
都会の人が癒やされる場所になればと思います」と話しています。

アスリートからアーティストまで

「地域おこし協力隊」は、総務省が平成21年度に始めた制度です。
過疎地の自治体が都市部から人材を募集し、最長3年間にわたって、地域活動に取り組んでもらい、地域力の強化を図るのがねらいです。
国は、自治体に対して、人件費や活動費などとして1人当たり年間400万円まで補助します。
各自治体はそれぞれのニーズに合った隊員を募集しています。

スキーのクロスカントリーの「聖地」といわれる北海道東川町。
町内で自前の選手を育てようと、ワールドカップなどに出場した新潟県出身の竹田良和さん(41)を採用しました。
竹田さんはスキー少年団を立ち上げて子どもの指導に当たり、道内の大会で上位入賞する選手が育ってきています。
竹田さんは「スキーのキャリアを生かしてやりがいのある仕事ができています。世界で通用する選手を育てるのが夢です」と話しています。

また、茨城県常陸太田市では、芸術を生かした地域づくりに生かしています。
4人のアート作家を隊員として採用し、▽市内のイベントで使ったこいのぼりの生地でエコバッグを作ったり、▽アート講座を開いたりして、住民の芸術への意識を高めています。
さらに、海女さんの高齢化に悩んでいた長崎県壱岐市は、海女さんの後継者として若い女性を採用しています。
「地域おこし協力隊」の制度が始まって初年度は隊員数が89人でしたが、5年後の去年3月には318の自治体で、およそ1000人まで広がりました。
多くは、20代から30代の若者で、隊員の6割は、任期を終えたあとそのまま地方に定住しているということです。

人口減少の対策に!

将来、人口の減少で全国896の自治体が消滅の可能性があると指摘し、ベストセラーになった「地方消滅」。
編著者の増田寛也さんは、「地域おこし協力隊」を設計したときの総務大臣でした。
「地域おこし協力隊」の広がりについて、増田さんは、「最初は100人未満のスタートでどうなるのかと思ったが、そうした不安は払拭(ふっしょく)された」としたうえで、「人口減少は続くが、それを緩和したり、地方に対する若い人たちの見方を変える有力な仕組みになると思う」と述べています。
そして、隊員への期待について、次のように述べています。
「若い人たちのネットワークは強くて大きい。1000人を超えるまでになった隊員たちが各地の魅力ややりがいを語ることで、地方のおもしろさに多くの若者が気付いてくれるし、ぜひ、こういう制度を母体に活躍する人が増えてほしいと思う」。

隊員3000人への課題は

先月、全国の隊員が東京に集まって、交流を深めるとともに活動の成果を報告しました。

国は来年までに「地域おこし協力隊」の隊員を3000人に増やす方針です。
総務省は協力隊を導入する自治体を増やすため、今年度から自治体向けの講座を開く予定です。

一方、課題も残されています。
これまでに、▽自治体が明確な役割を決めずに隊員を招き、その後、サポートなどもせずに隊員を孤立させたり、▽自治体が考えるニーズと隊員のやりたい仕事の間でミスマッチが生じ、隊員が任期途中でやめてしまったケースなどがあるということです。
兵庫県朝来市は、こうした失敗例を参考に、▽面接段階で地域の責任者も立ち会ってもらい隊員との思いにずれがないかチェックしているほか、▽毎月、採用した隊員から話を聞くなどして、フォローをしています。
国が掲げる地域再生。
「地域おこし協力隊」がその役割を担うには、地域の存続に取り組む住民の熱意と、隊員の新しい発想を自治体がサポートするという連携が欠かせないといえます。

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多田朋孔

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自然に囲まれながら、半分自給自足に挑戦しています
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